(以下は全くもって私の想像と妄想だけで書いた記事)
Appleは、iPhone 3GSをより高速化させ、快適に利用できる環境を整えた。
文字入力の高速化、Webページレンダリングの高速化、.appの高速化。思っていた以上の進化を果たした。
想像の域を超えないが、Appleの開発部内では、恐らくこれらの事はiPhone 3G 発売時(昨年7月11日)にはクリアしていたのではないかと思っている。より高速なCPUを搭載し、容量の多いメモリを搭載した?iPhone 3GS?のプロトタイプは出来上がっていたのだろう。iPhone のロードマップに従って。
但し、それを昨年の時点で市場に出すためにはどうしてもコストが上がる。
スペックとコストのバランスは非常に大切だ。販売価格を下げるには、メモリの容量やCPUを抑えてコストを下げざるを得ない。OSや製造の開発費については、想像を絶するような投資がされているはずだ。開発費は先行投資だ。まずはそれらを回収する必要がある。事業とはそう言うものだ。バランスを保つために、まずはやや低スペックで市場に出す。その代わり、触ってて楽しい魅力的なユーザーインターフェースでカバーする。ここはAppleの得意な分野。
こうして登場したのが、昨年7月11日に発売されたiPhone 3G。
(※日本では発売されなかった初代iPhone については、実機を見たことも触ったことも無いのでここでは触れません)
また、機能を増やせば、設定や扱いに煩雑さが生じる。
しかし、これもAppleらしいやり方でクリアしていく。
昨今の高機能な携帯電話のように、あれもこれも出来ても使いこなせるのは一部のユーザーのみ。取説の厚さを見ただけでうんざりだ。誰も読まない。結果、せっかく搭載された機能の存在を知らないケースが生まれる。これは、Appleのポリシーに反するのだろう。使いたい機能を簡単に使えるようにするためにはどうしたら良いか。実装した機能を、どうナビゲートしたら使ってもらえるか。これがAppleの考えるポリシーだと思う。Appleのユーザーインタフェイスが考え抜かれているのは、ここが原点のはずだ。これをクリアするために、いきなりあれもこれもと多くの機能は搭載せず、徐々にバージョンアップを重ねて、機能を増やしていく。
そう。バージョンアップという方法だ。
いつの頃からだったか、Mac OSには「ソフトウェア・アップデート」という機能が備わった。ユーザーは「あのソフトのバージョンアップ」、「このソフトのバージョンアップ」といちいち考えなくても、AppleのOSやソフトなら一括でアップデート出来、常に最新のOS/アプリケーション環境を維持できるようになった。(一部不具合もあるが)昔は、いちいちアップデータを探し回ったものだ。
そしてこの「バージョンアップ」という方法を使うと、最初は知らなかった(或いは使い方が分からなかった)機能にスポットを当て、注目させると言う、副次的なメリットも生まれる。
「Cut, copy & paste」が良い例だ。
他の携帯電話でも出来るような「Cut, copy & paste」機能を、iPhone に搭載できなかったはずがない。しかしAppleには拘りがあり、頻繁に使う機能だからこそ、「他のどの携帯電話のインターフェイスよりも分かりやすく、使いやすいもの」に仕上げたかったのだろう。
そしてOS3.0のバージョンアップの登場とともに「Cut, copy & paste」を実装。見事にその機能にスポットを当て、WWDC09では観客が狂喜乱舞した。言葉は悪いが、「たかが Cut, copy & paste」に。
あのインターフェイスを開発するのに、いままで時間がかかったとはとても思えない。もしかしたらあんな当たり前なことでも、iPhone の中にあっては、メモリやCPUに負荷をかけ、クラッシュに繋がっていたのかもしれない。それでは元も子もない。ならば実装しない。Appleならそう考えたはずだ。
そうだとすれば、実装しなかったことは正解だ。ユーザーは「何でもコピペ出来る」と信じて疑っていないのだ。開発側にとって見たら、「ユーザーは何をし出すか分からない存在」なのだ。
穿った見方をすれば、敢えて実装せずに「コピペも出来ない携帯をAppleが発売」という悪いニュースを逆手にとって知名度を広げると言う考えだったのかもしれない。あまり歓迎されたことではないが、こういう事はどの業界でも良くあることだ。まぁ、それも戦略だ。
【後編へ続く】
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